賃貸管理会社がカスハラに遭ったらどうする?
- 弘瀬 達也
- 6 日前
- 読了時間: 4分
〜増える過剰要求とその背景、実効的な対策を考える〜
賃貸管理の現場では、入居者や保証人、仲介会社、時にはオーナーからも過剰な要求や理不尽な苦情が寄せられることがあります。こうした**「業務範囲を超えた過剰な要求」「感情的・威圧的な言動」は、一般にカスタマーハラスメント(カスハラ)**と呼ばれ、現場の大きな負担となっています。
本記事では、賃貸管理業務におけるカスハラの実情と、現場・組織・経営レベルで取り組むべき対策を整理します。

賃貸管理業務におけるカスハラとは
「対応が気に入らない」「謝罪しろ」「責任者を今すぐ出せ」「管理費を減額しろ」など、契約外の過剰要求や人格攻撃、長時間の電話・訪問などが反復される状態は、カスハラに該当します。
▼ 賃貸管理に特有のカスハラの例
発信者 | よくあるカスハラ的言動 |
入居者 | 設備不良への即日対応を強要/過剰な弁償要求/深夜の連絡執拗化 |
保証人 | 滞納対応への不満を理由に暴言・脅し文句 |
仲介会社 | 退去立会・原状回復に関する不合理な要求 |
オーナー | 入居者対応の遅れを理由に担当者を責め立てる/差別的な入居条件の強要など |
これらは業務遂行の障害となるだけでなく、従業員の精神的ストレスや離職の原因にもなり、組織全体の持続性に関わるリスクです。
なぜカスハラが起きやすいのか?賃貸業務の構造的背景
賃貸管理会社は「借主」と「貸主」の双方に向き合いながら、以下のような状況を日常的に抱えています:
契約や責任の範囲が曖昧に認識されている(=何でも管理会社がやると思われやすい)
クレーム処理や対応履歴の記録が属人化している
管理戸数の増加に対して人手が追いつかない
つまり、業務の“グレーゾーン”が広く、感情のはけ口にされやすい構造があるのです。
カスハラが放置されると起こる3つの経営リスク
人材の流出・採用難に直結 → 若手や事務職など対面経験の浅いスタッフが退職しやすくなる
ブランドや信用の毀損 → SNSやクチコミでのネガティブ情報拡散/管理受託解約
法的・労務上のリスク → ハラスメントが労災や訴訟問題に発展するケースも
これらは単なる「現場対応の問題」ではなく、経営戦略・人事戦略に影響を与える重大事項です。
カスハラへの現実的な対応策
1|業務範囲の明確化と契約ベースの説明
理不尽な要求に応える必要はありませんが、「なぜ対応できないか」を明確に説明する力が必要です。そのためには:
管理委託契約・重説の内容を常に確認できる体制を整える
スタッフ向けに**「対応可能/不可能」の判断基準と説明文例**を共有する
「業務外対応」を曖昧にせず、“NOと言える仕組み”を構築する
曖昧な返答や場当たり的な対応は、さらに攻撃を招くリスクがあります。
2|カスハラ防止条例や指針の社内外周知
3|法的リスクへの備えと専門家連携
4|一次対応・初動業務をBPOや外部窓口に切り出す
カスハラ対応は“労務・ブランド・生産性”の3軸課題
カスハラ対応は、ただの現場処理ではなく、経営資源(人材)を守り、業務を持続可能に保つための戦略施策です。
経営課題 | カスハラ対応で得られる改善効果 |
離職率・人材定着の問題 | 従業員を守る姿勢が定着率・エンゲージメント向上に寄与 |
品質・評判リスクの回避 | 一貫した対応方針によりクレーム拡大・炎上の抑止が可能 |
生産性・効率性の確保 | 対応工数の外部化・標準化によりコア業務への集中が可能に |
まとめ
賃貸管理会社は、複数の関係者の間で期待と責任のバランスを取りながら業務を遂行するという特性上、“業務の限界”と“対応すべきこと”を切り分ける力が求められます。
その中でカスハラは、対応を誤れば「人を失い、信頼を失い、事業の持続性を損なう」リスクを持つ、無視できない経営課題です。
対応を属人化させず、組織としての対応基準・教育・記録・分担体制を整え、必要に応じて外部リソースも活用することが、持続可能な管理運営の第一歩となるでしょう。
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